芸大作曲科卒が本気でショパン風ワルツつくってみた

芸大作曲科卒が本気でショパン風ワルツつくってみた

YOGO
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2024/12/31

経緯

2024年末、いつも仕事でお世話になっているLAPRAS株式会社 のオンライン忘年会に参加しました。

そこで余興の一つとして某テレビ番組の格付けチェックのようなものを行うことになり、
その音楽の問題の作成をしました。

作成にかかった時間: 約2時間

問題: 本当のショパンはどっち???

その内容の反響がよかったので、先日Xに投稿し、
投票機能を使って、クイズにしてみました。

正解はこちら

余談: 芸大作曲科について

クイズについてはプロの音楽家でも半々に割れるぐらい、結構リアルに作れたとは思っています🙌
(Xの投票も200投票中60:40ぐらいに割れていました)

で、なんでこんな問題をうまく作れるのかというと、実は私(余湖)は東京芸術大学作曲科の出身で、実は受験時代に沢山こういった既存作曲家の楽曲分析スタイル模倣を行なってきたからなのでした。

「芸大作曲科ってどういうところなの?」とよく聞かれるのですが、
ざっくりいうと

  • 大先輩に瀧廉太郎や坂本龍一がいる
  • 入試はセンター試験 + 4次試験まである(試験時間の合計がだいたい30時間ぐらい?)
  • 入試合格する時点でほとんどの実践的なスキルは身についてしまうので、学校に入ってから習うことは実はほとんどない

というような感じのところです。

特に入試に関しては、「高校生にそれやらせる?」というレベルで困難極まりない内容なので、簡単にどんな内容か紹介しておこうと思います。

まず、作曲科の入試は全試験共通して、ピアノや音の鳴るものは一切禁止です。
試験会場は普通のセンター試験のような教室に空の五線譜がいっぱい用意されていて、使えるのは鉛筆・消しゴム・定規だけ、試験時間ずっと全員無言で「カリカリカリカリカリカリ」と楽譜を書いている超・異常空間です🤦

1-4次試験までの内容をざっくりいうと

1次試験

和声(コード)の試験。
バス課題/ソプラノ課題に分かれていて合計6時間ぐらい。

2次試験

対位法(メロディとメロディを重ねる技術)の試験。
自分の年はフーガを書く試験で、5時間ぐらい。

3次試験

自由作曲(完全に自由ではない)。
簡単なモチーフが与えられてそれに基づいてソナタをだいたいみんな書く。
8時間ぐらい。

4次試験

ピアノの試験、聴音(弾かれた音を楽譜に書き取る)、新曲視唱(楽譜に書かれた音を初見で歌う)、楽典(音楽の基礎知識)、面接など。
待っている時間なども結構あり、なんだかんだでほぼ丸一日かかったような記憶…

というような感じです。

実際の過去問: https://admissions.geidai.ac.jp/data/past-exams/music/2023-2/

作曲って感性じゃないの?

ところで、「創造的な行いである作曲に良し悪しをつけて評価するなんて…個人の好みじゃないの?」という疑問・批判もあるかと思います。
実際、自分もそう思っていました。

ただ、作曲の個人レッスンに長い時間通って、色々な先生からクラシックの伝統的な「書法」を手取り足取り、口伝で教わっていくうちに、作曲科入試は個人の好みではないことがわかるようになりました。

芸大作曲科が入試時点で見ているのは、地球上に沢山存在する音楽のうち「西洋で概ね17-20世紀以降ぐらいに流行っていた音楽のスタイルをどれだけ忠実にトレースできるか」という純粋な"技能" です☘️
そして、純粋な"技能" をみているからこそ、合格した人の答案はだいたい似ている感じになりますし、「わかっている人」が答案を見れば、みんな同じような採点をするだろうとも思います。

おもしろい話ですが、私も日常でテレビなどで流れてくる音楽が耳に入ってくる時、「あ、これはこっち側(古典的西洋音楽を勉強していた側)の人間の書いた音だな」とわかる時がよくあります。
つまりは、ある意味で作曲科に合格する/しないとは、そういったスタイル(語法)の共通認識の輪の中に入れるかどうか、と言い換えてもいいかもしれません。

そして、作曲科入試は、ある時代のあるスタイルを見ているだけなので、試験に落ちたからといって落ち込む必要もないですし、合格したからといって名曲をかける保証があるわけでもなければ、EDMや民族音楽まで得意なわけでもないです🙅‍♂️

話を戻すと、今回の記事で扱っているような「ショパンの書式」のようなものはドストライクで芸大作曲科が入試までに扱うスタイルの一つなので、昔沢山勉強したことを思い出しながら楽しく取り組むことができました😊

機会があれば、「本物のベートーヴェンはどっち?」とか「本物のバッハはどっち?」も取り組めたらと思います。(ちなみに私はバッハが1番自信があります)

それではまた!